今回ご紹介するのは、建築家の方のインタビューです。お話をして頂いたのは、建築事務所アトリエオーブの 西本哲也さん。アトリエオーブでは、多くの住宅建築を手がけており、クライアントの要望に応えながら、クライアントの理想の住まいを実現させてきました。今回は西本さんに、家づくりのこと、その背景にある考え、そして今後のヴィジョンについて語って頂きました。
Q. 建築に興味を持ったきっかけを教えてください。 そして、それがどう西本さんの家づくりに影響しているか、教えていいただけませんか。
テレビ番組で安藤忠雄の「住吉の長屋」を見て建築に興味を持ちました。そこで知ったのが壁面だけで十分に建築の存在感を与えることができるということでした。また、内部空間に取り入れた外部的空間は、現在も私のテーマとなっています。これらは無意識のうちに私に影響を与えています。
Q. 家づくりで心掛けていることはなんですか?
外観においては、壁面の使い方に気を使います。単一の壁面だけで表現するケースもあれば、壁面を組み合わせることで変化を与えるケースもあります。内部空間においては、階段・吹抜け・土間空間などを効果的に使う方法を模索しています。
Q. そうした心掛けが特に現れている事例を教えてください。
それが効果的に現れている住宅は、例えば、1950-houseやHMC-houseなどです。1950-houseでは、正面を三層の壁面で構成し、それぞれに役割を与えています。一層目の外側壁面は杉板のみとし、バルコニーを程よく隠せるようにデザインしています。二層目の壁面は、既製品のアルミサッシを縦に連続して配置し、デザインにアクセントを与えています。三層目となる奥の壁面は、建物全体のシルエットを現し、形とボリュームを印象付けています。単一壁面での役割を単純化することで組合せによる表現の幅が広がります。
Q. そうした施主さんとの関係でお聞きしたいことがあります。何か施主さんとの特別なストーリはありますか? もしあれば、その事例も教えてください?
プランを進める際に、施主の趣味や調度品が話題の中心になり、それがプランに反映されるケースも多々あります。1950-houseでは、施主が若い頃に購入した1950年代のレディチェアを置く場所が大きな課題となりました。
当初、施主自らが考えたプランがありました。それはレディチェアだけでなく生活用品すべてがきっちりと納まった家具のような家でした。施主はそのプランをトイレの壁に貼り、数年間マイホームを夢見ていました。結局、私の提案したプランとなりましたが、生活用品の収納場所はすべて施主が自ら考えました。こうして、建築家の考えと施主のアイデアが組み合わさることで、ただの理想の家でなく、それを現実のものにすることができます。こうした家づくりは建築家と施主のコラボレーションということができるかもしれません。
Q. 今後どのような家を建てていきたいですか?
コストや省エネルギーを考慮すると小さな家が理想です。小さな家でありながら狭さを感じさせない工夫が施された家を作っていきたいです。また現代は、コンピューターやモバイルフォンに長時間費やすことが多いです。私自身も腰痛や首の痛みに悩まされています。そういった意味でも、日常動作を誘発的に促すような工夫も必要になってくるのではないかとも思います。